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Fated 31









Side C








優しいひとだなんて事は昔から知っている
こんな風になりたいって、口には出さなくたってずっと思って来た僕の憧れのヒョン
その優しさがあまりに過ぎて、博愛的だという事だって僕は知っている
例え仕事だけだとしても、誰よりもヒョンを近くで見て来たから



羨ましいという思いと、僕には絶対にそうはなれないという思い
その優しさにこれ迄だって助けられて来た
若い頃、時には少し鬱陶しいと思った事も有る
でも『こんな風』に助けられる事になるとは思ってもみなかった



「チャンミナ…」

「っ、何…」



浴室のなかで裸で抱き締められた
今はまだ夜中で、だけど熱が治まらないからひとりでそれを逃してから眠ろうと思ったのに
つい数時間前まで抱かれて、それで落ち着いたと思ったのに

こんな浅ましい身体になってしまった僕に、それでもヒョンはどこ迄も優しい



「抱かれる、みたいに思うのが嫌?」

「え…」



あからさまに言われて、一瞬どうして良いか分からなかった
だって、僕はヒョンとセックスをするならつまり女役、だから
オメガになって、直腸が完全に女性器として働くようになったらしいから女役も何も…
女性と同じようなものなのかもしれないけれど



ヒョンは後ろ手でシャワーを止めて、それから僕をじっと見る
僕の顔なんて見たら萎えるだけだと思うのに
でも、触れ合う中心は硬い



「どういう事ですか…」

「チャンミナは後ろめたいのかと思って…
いつも、俺が主導権を握っているから」

「…っ…」



そんな事真顔で話さないで欲しい
ヒートだった時は確か…
覚えている限りでは後ろから
そうで無くても正常位で前から、まるで女性のように抱かれた
必死にしがみついて腰を振って…
思い出すと情けないのに身体が熱くなる

それに、シャワーを止めたら裸のユノヒョンから甘くて僕の思考を溶かしていくような匂いが濃くなる



「俺が横になるから、好きに動いて良いよ
それなら、俺が抱かれているみたいになるんじゃないかな?」

「…は……?」

「ほら、こうしたらどう?」



やはり真顔で当たり前のようにそう言うと、腕を離して仰向けで横になる
それから、頭だけを起こして僕に左手を伸ばして来た
戸惑っていたら
「おいで」
と優しく微笑む

ユノヒョンは優しい
だけど、そんな優しさ残酷だ
彼女が居る癖にまるで自分の身体を投げ出すようにして、女性のようになるのを厭う僕の事まで気にするだなんて
そうして、僕が引けなくなるようにするなんて



「タイルなのに背中は痛くないんですか?」

「ん?そんなに痛くなるくらい激しく長く、なの?
チャンミナに抱かれたら大変だ」

「はあ?何言ってるんですか……んぅっ…」



おどけたように言うから思わず返したら、今度は真顔になる
長い腕が伸びて僕の腰を掴んで…
それだけでぞくりとして声が出る



「最初の時より敏感になってない?」

「…っ今は身体が熱いから…それだけです」



違う、この空間にユノヒョンの匂いが漂っているからだ
それに、余裕ぶって話しているヒョンだって…



「そんな風にしていて…良く言えますね」

「…ばれた?チャンミナに抱かれたくて堪らないみたいだ」

「……」



そんな優しさ、正しいのか分からない
だって、スジンの顔が脳裏に過ぎるんだ
恋人を作るつもりじゃ無かったのに、それでも大切なのだと語った彼女の言葉も表情も
それだけユノヒョンを大切にしているのだと分かるのに…



「…本当に『抱いて』良いんですか?」



そんな事を言いながらも、引き寄せられるままに身体はヒョンの上に乗り上げている
逞しい身体を跨いで、僕を見上げる瞳を真っ直ぐに見下ろす

スジンの顔が過ぎるんだ
悪い事をしていると思っている
だけど、そんな、まだ善良な僕よりも結局は…
オメガになってどん底な僕をヒョンと、過去に好きだったスジンが置いて行く事が悔しくて苦しくて堪らない

それに、ひとりで自分を慰めてもう一度眠ろうと思っていた僕を追い掛けて浴室迄やって来たのはユノヒョンだ



「僕が悪い、とか言わないでくださいね」

「…勿論、頼って欲しいんだ」

「…」



本当に、あまりに優しくてこんなの自己犠牲だ
だけど、身体を擦り寄せたら…
いや、お互いに自然と擦り寄せ合ったら、僕達のモノは裏筋が擦れ合って止まらない
ヒョンだって感じているのだから少なくとも嫌々では無い筈



そして、僕はもう『ソコ』よりも良い場所を知ってしまった



「アルファって皆こんなに大きいんですか?
全部優れているなんて狡い」



そっと手を伸ばしてヒョンのモノを包んだ
そうしたら、びくっと小さく震えて切れ長の瞳が細まった



「っ、…さあ、どうかな
でも、そんなアルファがこんなになって抱かれるんだから、チャンミナの方が凄いと思うよ」

「……」



そんなの口だけだ
だけど、確かに男の僕なんかで感じたら…
少しはせいせいするかもしれない
せいせい、どころか本当はただの性欲なのに



「萎えられても困るので、顔は見ないでください、身体も」

「難しい事を言うなあ」

「んっ、…っ、僕がするから…」



先端にアナルをあててふう、と息を吐いたらヒョンの指がナカへと挿入った
準備なんて無くたって簡単に挿入る
まるで女性…いや、それよりも簡単なのかもしれない

空いている左手でその手を引っ張って掴んで首を振ったら、くすりと微笑まれた



「残念、じゃあ支えているよ」

「…っ、もう喋らなくて良いです…っあ、んっ…っ」



先端がつぷ、と挿入されたらもう、ヒョンのモノを支える必要も無くて簡単に飲み込んでいく
だけど一気に奥まで挿入させるのは何だか勿体無くて、ヒョンの腹に両手をついてゆっくりと腰を下げていく



「…っあぁ……ふ……ぅ…っ」

「…気持ち良い?」

「っ、喋るな…っ…」

「うん、ごめん、チャンミナの好きにして良いよ」




『好きにして良い』
なんて、確かに言葉だけならまるで男に委ねる女性のようだ
だけど、実際は僕はもう脚ががくがくと揺れていて身体中がぞくぞくと快楽に覆われている

それなのに、目を開けて見下ろしたら見ないで、と言ったのにユノヒョンは僕をしっかり見上げて舌で赤い唇を舐めている



「…あ…っあ……っん…っ」



これで僕が『抱いている』なんて言えるのだろうか
ユノヒョンの優しさは博愛的で献身的
誰しもに過ぎるくらいに与えられる優しさは時に毒にもなるのだと思う
だって、その優しさを利用して僕は…



「…っ、ヒョンなんて僕に溺れたら良い…っ」

「うん…なあ、チャンミナ、足りないよ」

「っ、あぁっ、…っや…動かないで……っ」



奥まで後少しで全て飲み込める、というところで一気に突き上げられた
自分のペースで何とか理性を保っていたのに



「ごめん、でもチャンミナが抱いているのは確かだから」

「…うそつき…んっあ……んっ」



僕が抱かれている訳じゃ無い、なんて、まるでこどもに言うように優しく諭される



優しさに甘えて下から揺さぶられて、それに合わせるように僕も腰を振る



「痛い?大丈夫?」

「違っ、…っん…あ…」



悦過ぎて涙が出るなんて知らなかった
求められて、それに慣れて安心するなんて知りたく無かった
このままヒョンが僕の身体に夢中になって、女性なんて抱けないようになれば僕達は同じところまで堕ちていける、なんて
そんな醜い事を思いたくなんて無かった



「可愛いな、チャンミナ
無理しなくて良いんだ」

「…っ、もう良いから……っ」



優しくなんてしないで欲しい
『オメガなんて気持ち悪い』
そう言って突き放して欲しい
僕を誘惑するような甘い匂いなんて纏わないで欲しい
オメガになる迄は、初めて抱かれる迄は感じた事なんて無かったのに



「…っふ……んっ…」



悔しいのか、気持ち良いのか、悲しいのか分からない
身体に力が入らなくてがくん、とヒョンの胸の上に頬をつけた



「疲れた?」

「…んっ……」



頭を優しく撫ぜられるだけで泣けて来る
スジンはこんな気持ちをヒョンに抱いているのだろうか
誰にだって、ヒョンはこんなに優しくするのだろうか



「…っ…」



泣きたいのに、胸を叩きたいのに甘い匂いがする
ヒートじゃ無いから意識はどこ迄もはっきりしていて、ただ蜜に引き寄せられる虫のように吸い寄せられる



「痛っ、チャンミナ…痕にならないようにしてくれないか?」

「ふっ…ん…」



鎖骨を甘噛みしたら、宥めるように髪の毛を梳かれる
それでも悔しくてがじがじと噛んでいたら、ぐんっと奥でヒョンのモノの角度が変わって思わず口を離した



「はっ…あっん…」

「そんなに感じてくれて嬉しい」

「違っ……やだっ!」



ヒョンの顔が近付いて上体が起き上がってまた奥で角度が変わる
悦いところを突かれて一際大きな声が出て抑えなきゃ、と思っていたら、鎖骨を噛まれて思わずヒョンの胸を押し返してしまった



「…っはあ……あ…」

「項は噛まないよ…チャンミナに望まれない限り
それに、今はヒートじゃ無いから俺達は正気だ」

「…あ…すみませ…」



困ったように肩を竦められて俯いた



僕は馬鹿だ
もしもヒョンが項を噛んだら僕達は『番』になる
それは恋人だとか夫婦だとか愛だとか…
そんなものじゃ無い
医師に何度も言われた通り、一生、どちらかが命を落とす迄続く契約

例え誰かを好きになっても、抱きたいと思ってもその逆だとしても…
その相手以外とは結ばれる事は無くなる
そんな事を、幾ら優しくたってする訳が無い
いや、したい、とも思う訳が無い



「ごめんなさい…」

「いや、俺の方こそ…
項を噛まれたら大変なのはチャンミナだよな
気になるのは当たり前だよ」



起き上がって座ったまま抱き合う形になった
ユノヒョンの大きな手に背中を抱かれてそのまま背中を擦られた

違う、大変なのは…
優しさと一時の快楽の為に男のオメガと番になるかもしれないユノヒョンなのに



「まだ抱いてくれる?」

「え…」

「最後迄イけて無いから、それにチャンミナもだろ?」

「…っあ、触らないで…っ」



緩く勃起した前を大きな手に握られて、奥でゆるゆると動かされたらもう力が入らなくなる
ヒョンの肩に爪を立てて必死で耐えていたら
「声を出して良いよ」
と優しく耳元で囁く

僕なんかの声を聞いたって萎えるだけの筈なのに
それなのに、許されるままにヒョンに委ねて声を上げても僕の『女性器』のなかにあるヒョンのモノは硬くなっていく
それが何だか、今の僕の存在が認められたようで嬉しかった



「…ごめん、ヒョン…っ」

「どうして謝るの?チャンミナに抱いてもらえて嬉しいのに」

「…っふ……あ…」



そんな事、優しいヒョンに言わせたく無い
本当は幸せになって欲しいとも思っているのに
僕の隣に居てくれるヒョンの幸せを奪いたくなんて無いのに



「…ユノヒョン…っ…」



『もうこれで最後にするから』
そう言おうと思った
本当は誰にもオメガになった、なんて知られたく無い
だけど、それを黙っていても…
例えばゲイなのだという事にすれば、見た目は僕は男のままだから、男に抱いてもらえるかもしれない

そうして、何とかお互いに都合の良い相手を探して、疼いた時に発散させたら良い
そうやって決意したのに、ヒョンはやっぱり残酷なんだ



「…これからも辛かったら俺を頼って」

「え……んっ…」

「他の誰か…男を頼ったら駄目だよ
俺しかチャンミナの秘密を知らないんだから」

「…ヒョン…」



真正面から見つめられて、黒い瞳から逃れられない



「…分かった?」

「あ……っん……」



キスなんて、抱き合っていたってしないのに
答えを出そうにも唇を塞がれて何も言えなくなった

そうして、そのまま腰を掴まれて突き上げられて…
ヒートじゃ無くたって、快楽で何も考えられなくなって浅ましく何度も縋りついた
















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